ニベ | barbell object ex for us
Dec 13, 2024
11月6日。
COELACANTHは三周年を迎えました。あっという間にも感じられるし、まだ3年かという気もする。自分が歳をとるよりも随分と、その錯覚の幅が大きい気がします。一先ずここまで走り続けて来られたのも皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
時は師走に文字通り奔走忙殺されているところで、どうして先月のお話をしているかと申し上げますと、三周年祝いのローンチに企画したエクスクルーシヴがトラブルを乗り越えようやく上がってきたからです。
三周年という客商売に於けるある種大きな節目。何か渾身のものを、長い年月で楽しめるものを、十分に所有欲を満たしてくれるものを作りたいと依頼の矛先を向けたのはbarbell objectでした。
普段から密にコミュニケーションを取っている中で生まれる忌憚のない意見交換。まだ見ぬ彼のアイデアと僕の我儘をセッション。
依頼したのはペインターパンツ。最近無性に履きたくなっていた。市場ではあまり見かけないし、一から作るなら未だかつて世に生まれてないようなものを作りたい。依頼内容は「ワークじゃないペインターパンツ」と、天地をひっくり返したものになりました。
リファレンスにはアメリカの名もないようなワークブランドの特に古くも新しくもないようなピースを用意し、これを如何に料理してもらえるか期待を膨らませていた。ワーキッシュにならない名目の下で、沢山の生地見本を見せてもらうこと数回。カシミアもいいよね、リネンカシミアで膨れる感じとか、ウールカシミアで艶のある感じとかワークウェアには絶対使えないし。って会うたび議論していたのですが、ある日に彼が「このレザーどうですか?」って持ってきたカンガルーレザーの未視感に打ち抜かれて、今までの議論とか一撃で吹き飛んで決まった。
革の種別としては「ニベ」と呼ぶ段階だそうです。本来は皮を革に加工する段階で除去してしまう層。整えられていない繊維の荒々しさと不均一に噴き出た毛足。この凄まじい迫力は、他のレザーでは替えが効かない。
重量感しかない唯一無二のムード。そして、それを裏切るような機動力。恐らく、未だかつて世に生まれたことのないレザーペインター。誰もこれを履いて現場仕事には臨まないであろう、ファッションコンシャスとデイリーユースの両立。
古物の仕様に敬意を払いながら和と差を繰り返す。必要なものをあえて削り、不必要なものをあえて足す。実験的かつ合理的なデザイン。リリ、トリプル、ループ、フラップ、バータック、etc...。細部までああだこうだと随分と拘ったのですが、ここで喋りすぎるのもブランドの本質と距離が出来る気がするので、抽象的に濁しておきます。
商品名どうします?と聞いたところ「nibe pt。笑」と返ってきた。進行中、僕らの中でコードネームとなっていた「ニベパン」。多くの時間を費やした締めに、そんな安易な思考をぶつけてくるところが彼らしく、そんな側面まで含めて面白い企画でした。
企画段階から先走ってお伝えしていた方々、大変お待たせしました。大凡9ヶ月の時を経て、紛うことのない渾身がようやく到着しました。
店頭販売は明日、12月14日(土) 13時より。革の性質上から個体差が大きいので通販の可否は未定です。