ANCELLMの美しきデニム。| ANCELLM
Jul 13, 2022
予定通り、ANCELLM 2022 AWの第一便が届いた。
現在、暦は7月。真夏である。
AUTUMN - WINTERの実感なんて当然まだない。
でも大丈夫。トップバッターとして当店に並ぶのはANCELLMと言えばの名品。
" 5P SELVEDGE DENIM PANTS USED "
待ち侘びた方も多いのではなかろうか。僕は待ち侘びていました。
因みにこの記事は「第二章」。
5P SELVEDGE DENIM PANTS USEDにフォーカスした記事です。
この記事だけでも成立しますが、よりANCELLMのことを知りたいって方は、昨夜に公開した第一章からお読み頂けると幸いです。とても長いですが。
第一章 : 手記 『アンセルムというブランドと僕』
2021SSの1stコレクションから、完売必須のこのデニムパンツ。
昨年11月のCOELACANTH実店舗オープン時、instagramのフォロワー300人程というほぼ誰も知らないお店ですら、ONLINEに掲載しただけで即完売した。(因みにこのお陰でçanomaの渡辺さんとお知り合いになれた。)
21AWも、22SSも、恐らく取り扱い店の全店で完売が相次ぎ、SOLD後も数々のお問い合わせを頂いた。
僕もずっと買えてない。ずっと欲しかった。ずっと諦めてきた。
先に言っておきますが、今季こそ僕も買います。もう無理です。我慢できません。
欲しかった服がようやく届く、ようやく着れるという高揚感。
興奮冷めやらぬということで、この熱量のまま先立って記事にしてみようと思い立った次第です。
展示会でも、あまりアイテムの説明をしないANCELLMデザイナーの山近さん。
22AWの展示会の時も、説明を踏まえたセールスをされるわけでもなく、軽く試着をして、あとはずっと屋上で煙草を吸いながらたわいもない話をしていた。(聞かない僕も悪いのかもしれないけれど...。)
実際にANCELLMのオフィシャルサイトでも、あまり多くのことは語られない。
その後の話で聞いたのが、御託よりも、見て、触って、着て、感じて欲しいってことだった。と思う。酒の席だったのでうろ覚え。
でも、なるほど、確かに。その労力を表に、俺すごくない?すごいことやってない?って誇示するブランドは格好良くない気がした。
まぁ、そんな山近さんには珍しく、このデニムについては色々とお話を聞かせて頂いたので、代弁いや代筆?する気持ちで書き綴ります。
このBLOGを読んで頂けている、一握りの大切な皆様には知って頂きたい一心。
まずは生地から。
世界的なデニムの聖地、岡山の生産背景を駆使するANCELLM。
このデニムはセルビッジを設ける為に、あえて旧式のシャトル織機を使用して織り上げられている。
低速でゆっくりじっくりと時間をかけて織るシャトル織機、時間がかかる為に生産効率が悪く、加えてセルビッジを設けることにより生地の使用範囲が限られる。
お世辞にも現代的とは言えない、旧式の前時代的なマシンを使う理由は生地の表情にある。
ゆっくりと時間をかけて織ることにより、生地の表面にザラつき凹凸が生まれ、陰影が現れる。
その細かな陰影が奥行きのある表情に繋がり、経年変化による色落ちの良さに結びつく。
そして、一見で目を奪われるUSED加工。
デニムのフェード(色落ち)加工というのは、ブリーチで色を抜くか、サンドブラストで一気に削り取るのが主流。
色を落としたあとは、色味を整える為に染色に浸ける。これが世に多く出回るダメージデニムの生産工程。
ANCELLMの場合、フェードの工程では一点一点、一箇所一箇所、加工職人さんが手擦りでこすって色を落とす。
着色の工程では、一箇所一箇所にスプレーを吹きかける。一箇所一箇所で濃度を変えてバランスを取る。
言わずもがな、汚れやダメージに至っても同様に手仕事で加工され、このフルハンドでの加工により、グラデーションのような色斑が生まれる。表情の奥行きが更に豊かになる。
多くの時間をかけて職人と話し合い、突き詰め、バランスを計算し、数多の試験と試作を行うことで、ANCELLMにしかない顔を見せる。
初めてこの話を聞いた時には、とても驚愕した。正直に言うと少し引いた。
「え?これ全部、手でやってるんすか?」と。
USED加工、ダメージ加工、VINTAGE加工。この世に多数存在する、この類のデニムパンツ。
ANCELLMを見るまで、僕にはこの加工デニムという類に「野暮ったい」とか「ギラついてる」とか「ヴィンテージの模造品」というイメージがあった。
だけどANCELLMがそのイメージを一瞬で拭い去った。というか別物だった。
膝は大きく破れているし、所々に小さなダメージもある。汚れ加工も施されてされている。
なのに、全体像には清潔感を感じてしまう。
綺麗なワイドテーパードシルエットや軽快な丈感、淡い色味にグラデーションのフェード。
削って、汚して、破いているのに美しくなっている。洗練されている。
この話は、こうやって、ここまで、これほどに手をかけているからすごい、という「労力と価値が比例する」ということが言いたいわけではない。
やはり洋服たるもの、見た目が良いことが第一である。技術や労力だけが価値を決定することは無いと、個人的には思っている。
しかし、ここまで妥協なく作り込むからこそ、この美しいデニムパンツは実現している。
ここまでやらなければこの素晴らしいデニムパンツは実現しないだろう。
そして、これだけ魂が込められた製品は、やはり人の心を掴む。
COELACANTHでお買い上げ頂いた方々も、皆さん揃ってよく履いてくれているし、買って良かったと笑顔で言って頂ける。
本当に嬉しい限りです。
AUTUMN - WINTERというよりLate Summerな気分から、一年を通して、長い年月を通して愛でられる、とっておきのデニム。
背景を知らずとも十分に素晴らしいアイテムですが、この記事で更に深くの琴線に触れられたら幸いです。
昨夜に引き続き、相変わらず長くなってしまいました。
この記事にかけた時間は大凡5時間。昨夜の第一章と合わせると、優に10時間は超える。連日で終電までの残業を必要した十分な労力だ。
僕の労力と価値は比例しただろうか。文章として見た場合には評価は得られないだろう。
それでも、それくらいしてしまうほど、ANCELLMには強い思い入れと、それ以上の素晴らしさがある。駄文だと思うけれど、熱量が届けばありがたい。
あとは店頭、ONLINEにて、このデニムの素晴らしさに触れて頂ければ幸いです。
ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。