手記『 アンセルムというブランドと僕 』| ANCELLM

手記 『 アンセルムというブランドと僕 』 / ANCELLM

 
実は2022SSの時点から書こう書こうと思っていたANCELLMをご紹介する記事。

手を付けたはいいけれど、熱が入りすぎて終わりが見えず、下書きとしてずっと眠っていた。

 

そんなANCELLMから今週末に2022AWの1st deliveryがあるとの連絡を頂き、今回こそはとようやく向き合いました。

 

これは第一章です。後日、第二章としてアイテムにフォーカスした記事も用意するので、予習としてお読み頂ければ幸いです。

 

まずはブランドの紹介から。

 


 

 

ANCELLM / アンセルム

2021SSシーズンに旗を上げた新進気鋭のデザイナーズブランド。

 

ブランドコンセプトには「視点を変えた経年変化の提案」を掲げている。

洋服と長く付き合い、着用を重ねることにより魅力が増すような素材の選定に注力していて、それを促すような設計や職人による熟練の加工技術が加えられる。


 

 

" 視点を変えた経年変化の提案 "

着込んで馴染むごとにそれぞれの美しい表情になっていく事を
新たなる価値観として提案していきます。

素材、加工など経年変化するという視点を持って選んだものを、
熟練の職人の手によって形になったプロダクトを是非長くご愛用ください。

 

ANCELLM official siteより抜粋。

 


 

デザイナーの山近 和也氏は、日本の有名デザイナーズブランドにて長きに渡って生産管理を担い、ランウェイまで経験した実力者。(本人のご意向によりどのブランドかは言えませんが、服好きなら大体は知ってるすごいブランドです。)

長年、生産管理として携わってきた経歴から生産背景との関係が深く、生地屋・縫製工場・加工場などの優れた技術を駆使してプロダクトしている。

後述するけれど、生産背景との付き合いの長さに加えてお人柄がとても豊かな人で、山近さんだからこそ出来る友人価格みたいなプライス設定も大きな魅力の一つ。これだけ作り込んでこの価格で済むの?ってくらい。

コストパフォーマンスで提案するのはあまり好きじゃないけど、ANCELLMに至ってだけは止む無し。諭吉一人二人分くらい違うんだから。

 

COELACANTHではありがたいことにオープン日からお取り扱いをさせて頂き、とてもご好評を頂いている。

僕が古着畑で育った人間だってことに加え、昨今の古着人気も相まって、COELACANTHへの来客動機の多くは古着目的。

しかし、そんな古着好きのお客様までもの心を掴み、大きな喜びを与えてくれているANCELLM。10年来、殆ど古着しか着なかった僕が夢中になったのと同様に。

 

おそらく古着が好きな方ってデザインだけじゃなく、細部の作り込みや素材使いにも造詣が深い。だからこそ、ANCELLMの語れるようなモノ作りはとても魅力的に感じて頂けるのだと思う。

 

そんなブランドです。

 

 


 

 

さて、ここからは僕とANCELLMの出会いの話。

ほぼ日記みたいなものです。

ANCELLMの製品には直結しないものなので、興味のない方は飛ばして下さい。馬鹿みたいに長いので。

 

僕が山近さん、そしてANCELLMと出会ったのは昨年の年明けから初春頃。

まだ一年ちょっとしか経っていないことにびっくりする。それくらい沢山のお話をさせて頂いて、時には強烈な思い出が残っている。

 

皆さん覚えていらっしゃるだろうか。「 Clubhouse 」というソーシャルメディアを。

2021年の1月頃、日本国内でも狂気じみたほどの人気を得て、大凡一ヶ月ほどで誰も口にしなくなるほど記憶の彼方へ消えた、音声型のSNS。

このClubhouseの中で共通の友人を介し、僕は山近さんに出会った。

 

ファッションの話をしようといった内容のトークルームで同席となりお話をさせて頂いたのだけど、この時の山近さんは比較的落ち着いた口調で、前職で生産管理を担っていたお話や、今はブランドをやっていることを伺った。

触りは真面目。だけどこれは表向きの話。

実はこの裏側、というかこの後。一般ユーザーが就寝する深夜帯に、「泥酒組合」という恐れ慄くような名前のルームが建てられていた。

 

泥酒組合は名前の如く酒好きが集合するトークルーム。

翌日には記憶から消えてしまうような内容の話をしながら、自分が飲んだ酒のアルコール度数を足し、その数の多さでマウントを取るという狂気の部屋。

この狂気の部屋の中で、山近さんは「大兄貴」と呼ばれていた。僕は一人っ子なので兄貴はもちろんいないのだけど、人生の中で初めて、「大兄貴」なんて呼ばれる人と出会った。

ファッショントークをしていた時の像は一瞬で消えた。大兄貴の山近さんは、大きな声でよく笑い、よく笑いを取り、浴びるようにお酒を飲む人だった。今、思い出し笑いをしてしまっているほどユニークな人だった。

 

 


 

 

まぁ、そんなこんなで仲良くして頂き、2ヶ月ほどの時間が経過した後、東京で開かれるANCELLM 2021AWの展示会へ招いて頂いた。

バイヤー向けの展示会というのは初めてで、当日はド緊張した。まだ3月というのに変な汗をかくほど。あれだけ酔っ払って夜な夜なくだらない話をしていたのに、いざシラフでお会いすると何を話していいのかわからない。

とりあえずANCELLMをしっかり見よう。初めて実物を拝見し手に取ったANCELLMは画面上で見ていた何倍も素晴らしいプロダクトだった。

緊張で顔がひきつっていた僕を気遣ってくれたのか、程なくしてビールを出してくれた山近さん。泥酒組合の公式ドリンクと呼ばれる、アサヒのスタイルフリー。一本開けたところで、ようやく緊張が解けた。

展示会の時間が過ぎても来客者が入れ替わり、最終的には柏の名セレクトショップオーナーさんと同席して夜中3時くらいまで飲み明かした。泥酒組合オフ会の開幕である。

 

この時のCOELACANTHはまだECだけの古着屋。商品としてのオーダーは当然できず、個人オーダーをした。製品の素晴らしさ、山近さんの人柄、酔い。様々なファクターが合わさって、今考えてもバカみたいな金額を買った。

 

翌日、前夜を思い返して、ANCELLMを取り扱いたい、お店に並べたいと沁み々み思ったほど、10年以上に渡って殆ど古着しか着てこなかった僕みたいな人間に、ANCELLMは突き刺さった。

古着屋をやるために上京した僕が、真剣にセレクトショップを志すようになったのがこの時。

東京はお店の数も多く、ブランドのバッティングも起きやすい。COELACANTHに並べるのであれば、取扱店もまだ多くない今しかない。

ようやく本腰を入れて、テナント探しを始めた。

 

半年ほどの時間が経ち、今のCOELACANTHのテナントが決定した。

山近さんにご連絡。快いお返事を頂き一安心。

展示会では個人オーダーしかしておらず、失礼は承知の上で、オープン時の商材として並べさせては頂けないだろうかという我がままなお願いも、快く引き受けて下さった。

本当に感無量でした。

 

因みに、この時のオープン商材としてANCELLMが並んでいなければ、COELACANTHの成長はもっと遅いものだっただろうし、çanomaの渡辺さんとも出会っていなかっただろう。

思い返すと本当に頭が上がらない。ありがとうございました。

 

 


 

 

僕はブランドを吟味する際に、デザイナーさんのお人柄もとても大切にしている。

デザインには多かれ少なかれ人間性が投影されるだろうし、長いお付き合いをしていくには欠かせないこと。

他のブランドのデザイナーさんも素晴らしい人ばかりだけれど、特に顕著に現れているのがANCELLM。

山近さんの人柄がなければ、そもそも僕はANCELLMを直接見ていないかもしれない。

「物」からではなく「人」が入り口のブランドなのだから。

 

付き合えば付き合うほどにユーモラス(とは言え、まだ一年ちょっとで酒の席ばかりだけど)。その一方で服作りには「超」が付くほど真剣で繊細に突き詰める。

このギャップの格好良さは、直接会うことのないお客さんには伝えられない。僕らショップオーナーやバイヤーだけの特権。

だからこそ、やや赤裸々に書き綴ってみた。後で山近さんに怒られるかもしれないけれど。その時は静かに消して無かったことにします。

 

冒頭の方で書いたとおり、その豊かな人柄から生産背景との深い付き合いが生まれ、素晴らしいプロダクトを実現している。僕同様に、みんな大好きな山近さん。

この人の人柄なしでは作れないANCELLM。

ANCELLMが原動力となって実現したCOELACANTH。

ANCELLMと出会わなければ、今日もCOELACANTHはECのみの営業で、僕もだらだらと自宅で仕事をしているんだろう。

これを読んで頂けている皆様にも、ご来店頂いているお客様にも、出会わなかったことだろう。

どれだけ感謝してもしきれない、思い入れの強いブランドです。

 

 

 

さて、随分長々だらだらつらつらと書いてしまった。

最後までお読み頂けた方は何人くらいいらっしゃるだろうか。

一心不乱にキーを叩いていたので、読みづらい箇所もあったと思いますが、心折れずここまで辿り着いて頂けたこと、本当にありがとうございます。

 

明日は、入荷アイテムにフォーカスした記事を書こうと思っています。

今日ほどではないと思うけど、きっと長くなるだろう。

懲りずに、お願い致します。

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